国家は混乱に満ちていた。労働者たちは解体された福祉制度に直面し、資本家は苦労して稼いだ利益を失い、中流階級は徐々に衰退を始め、国家は深刻な赤字に頭を抱えた。
この混乱を収めることができるのは、もはやあなただけだ。
あなたは労働者の側に立ち、社会改革のために戦うか?
企業や自由市場に立ち向かうか?
国が全体をまとめようとしているのを助けるか?
それとも、自身の目的を貫き通すか?
HEGEMONYは非対称の2-4人向けボードゲームで、プレイヤーたちは特定の階級を担う。
各プレイヤーたちはそれぞれ異なるプレイングで、独自のアジェンダを追求していく。
- テーマ:政治シュミレーション
- 方式:非対称型対戦
- 主要メカニズム:カードドリブン、非対称
- プレイ人数:2-4人
- 想定プレイ時間:1人につき30分程度
- プレイ適正年齢:15歳以上
- 入手難易度:?
今回は、キックスターターのプロジェクト紹介になるが、実際にゲームをプレイしたわけではないので、キックページおよびルールブックを読んだ上での感想のような紹介になることを留意してほしい。
今後実際にプレイした際は、また追記していくこととする。
なんだこの魅力しかないゲームは!?
まず最初にキックスターターのプロジェクトページを置いておく。
テーマは「政治シミュレーション」。
確実に人を選ぶテーマではあり、難解な用語も多い(政策や主義など)。
しかし、私はめちゃめちゃストライクゾーンだ。
さて、そんなHegemony:覇権だが、上述の通りプレイヤーは4つの階級に分かれて勝利点を争うゲームだ。
階級はそれぞれ労働者、中産階級、資本家、そして国家だ。
そして本作はいわゆる、各階級に「個別に特殊能力がある」タイプのものではない。
各階級のアクションが全く別の動きをする「非対称」ゲームと呼ばれるものだ。
非対称ゲームでいうと、「Root」は国内でもよく遊ばれる声が聞こえる。
なかなかお目にかかれないメカニズムのゲームなので、これだけでも十分関心が高い。
もう少し説明を加えると、本作は「完全」非対称ゲームではない。
どういうことかというと、労働者と資本家はそれぞれ別の動きをするが、中産階級は前2者が混ざった動き方を、国家は前3者を俯瞰するような立ち位置からプレイされる。
ああ、これは涎が止まらない。ルール説明時ですでに頭が沸騰するのは容易に想像できる。
ボードゲームで再現されるリアル政治ワールド
実際にゲームをプレイしているわけではないので、正確なプレイ感が伝えられないのが惜しいところであるが、ルールを読む限りそこかしこに「リアルな政治」の世界を感じることができる。
まず前提としてそれぞれの階級の説明を加えておこう。
ご覧の通り、各階級は各々の目的を追求している。
しかし、その目的の達成には別の階級への干渉が不可避だ。
このゲームには干渉するための仕掛けがかなり多い。
その最もたるのが、センターボードに置かれる「政治テーブル」だ。
中身は以下の通りだ。
- 1.財政政策:国が取得できる借金の額や公開会社の数を決定
- 2.労働市場:最低許容賃金を決定
- 3.課税:毎ラウンドの税金額を決定
- 4.健康と福利厚生:公衆衛生の費用を決定
- 5.教育:公教育の費用を決定
- 6.対外貿易:関税の金額を決定
- 7.移民:国が移民に対してどれだけ開かれているか決定
そしてこれらの政策は、ラウンドごとに国家を除く各階級たちが政策に対し法案を提出し、選挙を行うことで、可決されたり否決されたりすることで変動する。
投票は各階級の投票キューブが入った袋からキューブをランダムに取り出し、その多数決によって決定される。国家だけは投票キューブを持っていないが、その影響力を使って選挙を有利に進めることも可能だ。
選挙は袋からのランダムピックなので運要素も絡むのだが、とにかくアツい。労働者は賃金を上げたいが、資本家はお金を払いたくない。資本家は関税を払いたくないが、国家は税金を多く取りたいのだ。各階級の黒い思惑が、選挙には詰まっている。
リアルテイストなアートワークとスタイリッシュなアイコン
私が紹介するボードゲームの多くは、アートワークありきだというのはもはや恒例だ。
いわずもがな本作も例外に漏れず、綺麗なアートワークだ。
そしてアイコンもわかりやすく簡素なものになっている。
不安材料としては、海外ボードゲームでは避けて通れない言語依存であるが、確認できる限りアクションカードというのが各階級40枚ずつある。
そのほか、イベントカードが25枚あるので200枚弱といったところだ。
各アクションカードに記載のテキストは、そこまで長文ではないので訳すことはそこまで苦労はなさそうだが、このゲームのメカニズムはカードドリブン(カードのプレイがアクションになる)なので、一考の余地はありそうだ。
非対称が織りなす各階級の殴り合い
非対称ゲームとして有名な「Root」であるが、実は私は苦手な部類に入る。
アクションが全員同じならばある程度予測と対処ができるのだが、非対称の場合はそれが難しい。
そこに面白さが詰まっているのは承知しているのだが、苦手なまま触れるのを諦めてしまったため、いまだにトラウマな部分は残っている。
しかし本作の場合、全てが違っているわけではなく、数あるアクションのいくつかの組み合わせで各階級が構成されているため、ルールを読んでいて特に苦手意識は感じなかった。
そもそも、普通のゲームを作成することですら、私にとってはすごすぎることなのに、それをプレイヤーそれぞれが違う非対称のゲームとして調整し、成立させてしまうバランス感覚には恐怖すら覚える。しかもゲームのウエイトは2時間はかかるであろう重ゲーだ。デザイナーの頭の中が見てみたい。いや、余計こんがらがるので見たくない。
今作はテーマが政治でもうその時点で重いのだが、それを階級で分けるのがすごい。1つの国の行く末を見ることができるだけでなく、プレイヤーとして実際に動かせるのだから。
普段労働者として生活している私だが、資本家として、国家として国を見つめることができるのはおそらくこのゲームをやっているときだけであろう。
国家として国民に重い税金を課し、金を巻き上げ、VPを獲得するのはなんて楽しいことなのだろうか。権力者とは、こんなに快感なのか。
はたまた、資本家として労働者をこき使い、自身は会社の運営をするだけで金や資源が転がり込んでくる。なんて甘美な生活なのだろう。
いや、やはり労働者として一致団結し、小さな力を持って権力に立ち向かい、打ち勝つことが我々にできる唯一の行動だ。汚い国家や資本家はこの国に入らないのだ。
そんな殴り合いが楽しいと感じる人ならば、必ずこのゲームも気にいるであろう。
各階級の詳しいアクションについては、別途記事にしたのでそちらを参照してほしい。
総評
このゲームが上手く機能するのであれば、今年みてきたゲームの中でもかなり上位に食い込むレベルのものだと感じたが、いかんせん実際にゲームをプレイしていないので細かく評価できていないのが申し訳ないところ。
まだプロジェクトは始まったばかりなので終了までにもう少し細かく掘り下げていければと思う。
- 非対称ゲームというあまり見ないメカニズムを採用
- テーマとリアルなアートワークの合致に加え、実際の政治に即したルールがゲームに拍車をかける
- とにかく選挙がアツい
- 個人的ツボ
- 言語依存のあるカードドリブン
- 非対称ゲームで、ルール説明が面倒
- 用語が難しいものが多い(政治にかかわるもの)
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