まもなく総選挙がはじまる。
20代の投票率は年々下降がすさまじく、平成29年では約33%と60代の半分となっている。
嘆かわしいことであるが、何もこれは若者に限った話ではない。確かに若者の投票率が低いのは政治に関心がないことが最たる理由であろう。
しかし、グラフを見るとどうだろう。
そう、全体的にゆるやかと下降しているのだ。つまり、国民全体としても国の経営に興味がなくなってきているのだ。
だからといって、各政党のマニュフェストを聞かされたところで、本当に実現するかもわからんのだし、結局は実感が湧かないというのが本音。
国を動かすって、世界と競合するって、国を豊かにするって一体なんなのだろう。
わからない?わからないのなら、実際にやってみればいいじゃないか。
「WEALTH OF NATIONS:国富論」
国富論とは
- テーマ:経営
- 方式:対戦
- 主要メカニズム:リソース管理、交渉
- プレイ人数:2-6人(おすすめは3-4)
- 想定プレイ時間:120分以上
- プレイ適正年齢:15歳以上
- 入手難易度:★★★★☆
ただし、経営テーマでそこそこのリソース管理が求められるので、できれば15歳以上の「先を見据えた思考」ができる人が望ましい。
また、間延びしやすいゲームのため、あまり多人数でのプレイは推奨しない。
そして、一番のネックは2021/10現在、このゲームは絶版かつ日本語版は存在しないため、入手のためには少しお金を積む必要がある。
よくゲームを理解した上で購入すること。
ゲームプレイ概要
このゲームはプレイ人数によって初期資源が変わるラウンド制が用いられている。
ラウンドは「①交易②開発③生産」の3つのフェーズに分かれており、ゲームの終了はラウンド数ではなく、誰かが終了条件を満たした場合に終了するトリガー式。
ゲームは勝利点によって勝敗が決まる。
交易フェーズ
交易フェーズでできるアクションは3つ。
- 市場から資源を購入する。
- 市場へ資源を売却する。
- 他人と交渉し、資源等を交換する。
①では、自身の資金をもって、市場にある「食料、労働者、資本、鉱石、電力」を最高3つまで購入することができる。
②では、①とは逆に手許にある資源を最高3つまで市場へ売却することで資金を得ることができる。
③は他プレイヤーと交渉し、資源や資金のやりとりができる。
これらのアクションを全員がパスするまで続ける。
また、購入に必要な資金が尽きた場合は「いつでも」約束手形を発行し、借金をすることが可能。
開発フェーズ
このフェーズでできることは4つ。
- 領土の拡大。
- 産業の開発。
- 産業の移転。
- 産業の機械化。
どれも先ほど集めた資源を支払うことで、アクションを実行することができる。
①は労働者を支払うことで、自身の領土を新たに確立することができる。
②では、①で確立した領土に産業を興すことができる。
③は②の産業を他の領土へ移転させ、④は産業を機械化することでより効率的に生産を行うことを可能とする。
このフェーズでも全員がパスを宣言するまで続く。
生産フェーズ
このフェーズはプレイヤーのアクションは存在せず、処理だけが行われる。
配置した産業に対して資源を支払うことで各産業が資源を生産する。ダウンタイム縮小のため、全員で同時に行うことを推奨。
処理が終われば次のラウンドの交易フェーズに移行する。
国富論の魅力について
直感的な面白さ
ゲームを実際にプレイした感想としてはかなり面白く、いうなれば「カタン超複雑版」といったところである。
大きな理由として、「交渉の面白さ」と「相場を読む面白さ」があげられる。
また、ダイス等の運用素を減らし、より交渉に特化しているという意味で「複雑なカタン」という言葉を使った。
このゲームにおける「資源」は、購入価格・売却価格が決まっておらず、何の資源がいつ高騰するかを考えなければならない。
また、それらを見越して他プレイヤーと交渉したり、買い占めたりすることも可能なため、常に市場には気を配らなければならない。
交渉するときの価格ももちろんプレイヤーの自由なため、提示された交渉価格が適正なのか、それともふっかけられているのか、プレイヤーの瞬間的な頭の回転と度胸、交渉術が試されるだろう。
ゲームのプレイ感
ルール自体は複雑ではなく、大雑把に言ってしまえば、「売り買い」して、「建物立て」て、「生産」してを繰り返すだけだ。
慣れればゲームを素早く進めることも可能だろう。感覚的には、交渉フェーズがゲームの7割を占め、開発フェーズ2割、生産フェーズ1割といったところ。
このことからわかる通り、交渉が間延びしてしまうとゲームはダレてしまうので注意が必要だ。
対策としては時間制限や取引回数に制限をもたせるのもいいかもしれない。私はハウスルールとしてプレイヤー間の交渉の際には、「どんな材料」も交渉していいルールを採用している。
資源や資金はもちろん、なんちゃって先物取引などはより複雑性を増してゲームに深みを足してくれる。
補足説明
先物取引とは、売り手と買い手が「ある特定の物」を「その時点で取り決めた価格」で「将来の決められた日(期日)」に、売買することを約束する取引のことを指す。
グラフィック
メインボードを中心として、その周りを囲むように各資源ボードが配置される。見た目としては120点を挙げたくなるほど、美しい作りだと私は感じる。
ゲームの終了条件の1つは、メインボードすべてが埋まることであるが、少ないプレイ人数の場合は、なかなかタイルが埋まらずこれもまたゲームが間延びしてしまう可能性の1つだ。
拡張版のルールではプレイ人数ごとに使えるタイルが制限されるので、こちらのルールは適用必須といっていいだろう。
また、周りを囲む資源ボードに着目すると、各資源の価格が表示されている。それぞれ購入価格、売却価格、そして資源の間に表示されているのが「交渉参考価格」だ。
交渉する際はだいたいの相場観の目安になるので、意外と重要な役割を果たしている。
リプレイ性
このゲームはとにかく間延びがしやすい。
交易フェーズでの交渉を筆頭に、複雑な重量級ゲームとは切っても切れない「長考」、ゲーム終了条件トリガーまでの長い道のり。
古いゲームでルールが整頓されていないということもあるが、ゲームとしては最高級に面白いので惜しい。
もし間延びやダウンタイムが長いことを理由に遊ぶのを諦めてしまった人は、ゲームを短縮させるハウスルールを取り入れてプレイすることを強く強く推奨する。
「まだ全然やり足りないくらいの状況でゲーム終了」くらいが、あなたに強いリプレイ欲を促すだろう。
おわりに
今回は「国富論」というボードゲームの紹介をした。
このゲームには拡張も存在するのだが、私はタイルの制限ルールなどをいれるだけに留まっており、コアゲームだけで十分面白いと思っている。
また、今回紹介してきれてないほど細かい魅力が存在する、本当にいいゲームなので気になる方はぜひ手に入れてプレイしてみてほしい。
もっとも、一番は再販され、もっと気軽に多くの人に触れられることを望むのだが、ここまでマニアックなゲームにそれを期待するのは難儀だろう。
さて、ここまで読んでくれた方の中には、少しは国政に興味が湧いた人もいるかもしれない。
そうなれば、とりあえず重い腰をあげて投票に行こうじゃないか。
もしかしたらその一票が、国を豊かな方向に変えてくれるかもしれないのだから。
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